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不動産投資とDCFとNPVとIRRの関係

“投資”は、“現在資金”を確実に実行可能な現在の消費に使うこととは異なり、一定のリスクを許容し、その見返りとして“将来のより大きな資金”を得ようとする意思決定です。しかし、投資家は未来の資金獲得において自身が被るリスクの見返りとして、それに見合った“期待収益率”を要求します。これは、ファイナンス理論の前提です。

投資案件のリスクを反映させた相場ともいうべき“期待収益率”が、いわゆる“割引率”に該当します。将来においていかに大きな期待キャッシュ・フローが考えられようとも、そのリスクが大きければ、大きな投資はできません。収益率が上下方向に動く程度が大きいのであれば高い期待収益率を要求せざるを得ないので、期待キャッシュ・フローとその高い期待収益率により求められた投資可能額(期待収益率で割り引いた現在価値)は低くなります。

実際のリターンが上下するする“リスク”は“不確実性”です(筆者は、“リスク”と“不確実性”とは根本的異なる概念であり、この両者の差異を無視するところに今日のファイナンス理論の欠点の一つがあると考える者ですが、ここでは敢えて、“リスク”と“不確実性”を厳密に分けることはせずに話を進めます)。投資家は、この“不確実性”に伴う“リスク”がどの程度分散投資により低減できるのか、相関係数にて計測した上でリスク指標を計算し、それに応じた期待収益率を要求します。

“ディスカウント・キャッシュ・フロー”あるいは“割引キャッシュ・フロー”と訳されるDiscount Cash Flow=DCFの考え方を利用した投資分析方法は、不動産投資においても一般的に馴染みの深い方法です。事業M&Aのための企業価値評価にも広く利用されている考え方なので、何度か耳にしたことがあるという人も多いはずです。DCF分析の重要部分である割引率の決定には正確な予測が困難な幾つかの変数が含まれるという欠点もありますが、DCF法は不動産投資におけるプライシングツールの一つです。

DCF分析で使用される変数には、初期費用・年間費用・推定収入・保有期間が含まれます。これはどういうことを意味しているかと言うと、DCF分析は、予測される投資による将来収入または予測キャッシュ・フローを調べ、そのキャッシュ・フローを割り引いて推定現在価値を求めることにより収益性と投資価値を判断するための評価方法だということです。この推定現在価値は、一般に正味現在価値(Net Present Value=NPV)と呼ばれます。大雑把に言い換えると、DCF分析は将来どのくらいのキャッシュを生み出すかという予測に基づいて現在の資産価値を把握しようとするわけです。

割引率は、予想される将来のキャッシュ・フローのNPVを導くために使用されます。不動産の投資評価における割引率は一般に、不動産の期待年間収益率です。すなわちDCF法の目的は、投資家が投資から受け取るキャッシュを時間価値に合わせて調整して推定するところにあります。

不動産投資の場合、以下の要素を計算に含める必要があります。
①初期費用-物件の購入価格または頭金。
②資金調達コスト-予想される資金調達の金利コスト。
③保有期間-不動産投資の場合、保有期間は投資家と特定の投資によって異なります。
④追加コスト-これらには、予想される保守・修理のコストが含まれます。固定資産税及び

資金調達コスト以外のコスト。
⑤予測キャッシュ・フロー-当該物件の賃貸収入の年ごとの予測。
⑥売却利益-所有者が予想保有期間の終了時に物件を売却した時に実現すると予想される

利益額。

DCF法では、いくつかの変数を見積もる必要があります。これらは正確に特定するのが難しい場合もあり、修理やメンテナンスの費用、予想される賃貸料の増加、資産価値の増加などが含まれます。これらの項目は、その地域の同様の物件の調査を利用して推定されます。将来のコストとキャッシュ・フローを予測するための正確な数値を決定することは困難ですが、これらの予測と割引率が決定されると、NPVの計算ができます。

正味現在価値(NPV)とは、一定期間におけるキャッシュ・イン・フローの現在価値とキャッシュ・アウト・フローの現在価値の差です。対照的に、内部収益率(IRR)とは、潜在的な投資収益性を見積もるために使用される計算方法です。これらの測定値は双方とも、主に新しい投資または拡大機会に価値があるかどうかを判断する際に使用されます。つまりNPVとIRRは、投資評価に使用される2つの割引キャッシュ・フロー法と言えます。

NPVは特定の期間における割引キャッシュ・イン・フローの現在価値からアウト・フローを差し引いた金額の差でした。プロジェクトのNPVがゼロを超える場合、それは投資する価値があると見なされます。対してIRRは、金額ではなく百分率を使用して潜在的な投資収益性を見積もります。

それぞれのアプローチには独自の長所と短所があります。NPVの決定をするには、会社の場合だと、プロジェクトの将来のキャッシュ・フローを見積もり、プロジェクトの資本コストとそのリスクを表す割引率を使用してそれらを現在価値の金額に割り引きます。次に、投資の将来の正のキャッシュ・フローの全てが1つの現在価値の数値に縮減されます。投資に必要な初期の現金支出からこの数値を引くと、NPVが得られます。

例えば、Aがある会社を買収しようと考えているとします。Aは、その会社が生み出す将来のキャッシュ・フローを年率12%で割り引くと、現在価値が2350万円になると判断しました。会社の所有者が2000万円で販売する意思がある場合、このプロジェクトのNPVは350万円になります。350万円のNPVは、Aがこの買収を行う場合に追加される本質的な価値を表しています。

このプロジェクトには正のNPVがありますが、ビジネスの観点から会社はこの投資によってどの程度の収益率が得られるかも知っている必要があります。これを行うには、会社はNPVを再計算しNPV係数をゼロに設定して現在不明な割引率を解きます。これが、そのプロジェクトの内部収益率(IRR)です。この例では、プロジェクトのIRRはキャッシュ・フローの分配のタイミングと比率に応じて、17.15%に等しくなる可能性があります。したがってAは、予測されるキャッシュ・フローを考える時、17.15%の収益をもたらすプロジェクトを持っているということになります。

より高いIRRで着手できるプロジェクトがあれば、おそらく代わりに高利回りのプロジェクトを追求するでしょう。したがって、IRR測定の有用性は投資機会の可能なリターンを表し、他の代替投資と比較する能力にあることがわかります。

投資判断に用いられるDCFとNPVとIRRの相互関係を理解して、それら指標を適度に合わせて判断することによって、明らかに無謀な判断を予防する手助けとしたいものですね。

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