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不動産と相続

今年の4月19日、不動産と相続税に絡む重要な最高裁判決が出ました。

既に、報道でご案内の方もおられるものと察しますが、一言で纏めると、相続税の課税価格に算入される不動産価額を、国税庁長官から国税局長及び沖縄国税事務所長に対して発せられた内部文書である「財産評価基本通達」の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないとされた判決です。

この相続税更正処分等取消請求事件の一審判決が出た2019年12月から注目してきたのですが、およそ2年半後に最高裁の見解が示されたというわけです。

事案の概要を整理すると以下の通りです。被相続人である父親から首都圏のマンションを相続した際、相続人は相続税評価の際に税務当局が利用している「財産評価基本通達」に準拠して計算し、相続税を「0円」と申告しました。

国はこれを不当と判断して約3億3000万円を追徴課税する更正処分を行いました。本事案は、この処分の取り消しを求めた裁判です。

判決文によると、原告の相続人は、被相続人である父親が2009年に計13億8700万円で購入したマンション2棟を2012年に相続。

路線価に基づき計約3億3千万円と評価したうえで、購入時の借入金を差し引き、相続税を0円で申告しました。これに対し、税務署はマンションの路線価が実勢価格と大きく乖離していると判断。

通達の例外規定に基づき、不動産価額を計12億7300万円と再評価し、過少申告加算税を含む約3億3000万円を追徴課税したというわけです。

相続財産評価に関する国税庁の「財産評価基本通達」によると、土地は国税庁の発表する路線価を基準として、建物は固定資産税評価額を基準として算出することが原則になっています。

もっとも、通達とは、行政法学上、対外的効果を持たない単なる内部文書という位置づけである上、相続税法では、時価を基準にするとの明記があるので、通達に反する内容の処分がなされたからといって、直ちに違法になるものではありません。

ただ、実務上の処理の簡便性もあって、基本的には通達に従った処分がなされています。相続人もこの原則に従ってマンション2棟の価値を評価し、相続税を申告したわけですが、税務当局はそれを認めなかったということになります。

申告されたマンション2棟の相続税評価額と時価との間に著しい乖離があることを問題視して、基本通達の評価方法を適用すれば、納税者の税負担の公平を著しく害する特別な事情に当たるとして、別の方法による財産評価を例外的に認めました。

相続税法では相続財産の価値は時価としているので、決して違法な処分とは言えないわけですが、実質的には、これまで基本通達の基準で判断され、それゆえ実勢価格よりも路線価が低い傾向にある都市部のタワーマンションなどを購入することが“節税対策”になるとして注目を集めていました。今回の判決によって、どの程度の影響が生じるのかが注目されるところです。

但し、本判決は極めて限定的な射程しか持たないのではないかと考える向きもあります。というのも、判決文を子細に読むと、実勢価格と路線価との乖離がある場合には通達の原則通りの路線価評価を行わずに新たな算定による評価に基づく課税が妥当であるとまでは判示していないからです。

あくまで私見ではありますが、今回のケースはあまりに露骨で、“節税”の域を超えた“租税回避行為”と見られても仕方がないケースであったことから、国税も仮に訴訟で負けるようなことにでもなれば法改正してやるというつもりで勝負に出たのではないかと思われます。

元々、資産を不動産化して路線価評価にし、かつ、借入金を負債として作り上げることで、現金(負債)と不動産の相続評価と実勢価額の差を利用した“節税”は一般的でしたが、やり過ぎたということに尽きるのかもしれません。

また、そういった事実認定がしやすいような、死亡直前の対策、相続税申告期限前の不動産売却があったようです。

ところで、不動産と課税をめぐる“いたちごっこ”の典型が、いわゆる“自販機スキーム”をめぐるやり取りです。このスキームは、マンション購入の事業年度に自販機を設置し、課税売上割合を95%以上にして、建物建設に係る消費税の還付を受けることを狙ったものです。

しかし、建物を購入してから3年間通算で課税売上割合が50%以上変動すると、還付を受けた消費税を返納しなければならないことから、還付を受けた2年目の間に課税事業者でなくなる届出を出して、その返納を回避していた不動産投資家が山ほどいました。

そこで早速、課税事業者を選択してから2年間に建物を購入した場合は、建物を購入してから3年間は課税事業者の選択を取りやめることができない制度に改訂されましたが、この改訂も、課税事業者を選択してから2年間は建物を購入せず、3年目以降に建物を購入するというスキームを利用することで回避されてしまいました。

そこで再び、1000万円以上の建物を購入してから3年間は免税事業者になることが認められなくさせる法改正があり、さらに令和に入ってからの改正で、居住用建物については仕入税額控除自体が法律上認められなくなって命運は尽きたように見えるのですが、令和2年4月改正法施行ぐらいまでは、平成28年改正で封じられた部分がコロナ特例で解除されていて使えました。

期間は短かったですが、課税事業者から免税事業者へ、あるいはその逆、簡易課税の選択や取りやめの期間制限が特例でなしにできたわけです。

不動産のオーナーと税務当局の“いたちごっこ”というべき攻防を見ていると、己の利害得失に直接関わることになると、なるほど人間は必死になるものなのだなあという、逃れられない人間の性を意識しないではいられません。

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