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中古区分マンションを買う前に最低限おさえておくべきこと

国土交通省不動産・建設経済局不動産市場整備課が年間約30万件の不動産取引をもとにして価格動向を指数化した“不動産価格指数”というものを公表しています。報道等を通じてご存知の方もおられるでしょうが、この価格指数は、2010年平均を100とした上で、そこから指数化された数字の推移を見ることで不動産市場の現況を概括的に推察するのに役立ちます。

先月末に公表された令和4年6月・令和4年第2四半期分(令和4年6月分が住宅の、令和4年第2四半期分は主として商業用不動産の)の不動産価格指数を見ると、全体的には、全国の住宅総合は130.7で前月比0.1%減、商業用不動産総合は133.0で前期比3.7%増という結果でした。

住宅総合は130.7とはいうものの、細かく見ていくと、宅地は108.4で対前月比0.1%減、戸建住宅が114.9で対前月比0.1%減、マンション(区分所有)が180.1で対前月比1.4%減という結果。これまで急激な伸びを見せてきた北海道地方は、住宅総合で155.1(対前月比3.6%減)、宅地で126.3(対前月比0.3%減)、戸建住宅で140.0(対前月比3.3%減)、マンション(区分所有)で245.9(対前年比0.6%減)とやや下降気味にあるように思われます。

都市圏別に見ていきます。南関東圏では、住宅総合で148.0(対前月比1.9%減)、宅地で114.6(対前月比2.7%減)、戸建住宅で117.6(対前月比0.9%増)、マンション(区分所有)で173.8(対前月比3.0%減)となっています。

名古屋圏では、住宅総合で116.5(対前月比1.6%増)、宅地で99.2(対前月比で6.2%)、戸建住宅で111.0(対前月比0.9%減)、マンション(区分所有)で175.3(対前月比0.8%増)と比較的好調です。京阪神圏では、住宅総合で134.1(対前月比0.5%減)、宅地で111.8(対前月比2.4%減)、戸建住宅では114.4(対前月比4.1%減)、マンション(区分所有)では185.5(対前月比2.0%増)と南関東圏と同じく低調に推移しています。

商業用不動産となると、若干住宅とは趣が異なります。商業不動産総合では、全国が133.0(対前期比3.7%増)、南関東圏・名古屋圏・京阪神圏の三大都市圏が139.0(対前期比3.9%増)となっています。

細かく見ていくと、店舗では、全国が139.8(対前期比2.0%減)、三大都市圏が149.4(対前期比1.2%減)、南関東圏が158.4(対前期比で1.8%減)となっており、店舗は軒並み下落傾向が見え始めていますが、他方オフィスでは、全国が156.9(対前期比4.1%増)、三大都市圏で161.1(対前期比4.5%増)、南関東圏で204.0(対前期比16.6%増)と堅調のようです。

マンション・アパート(一棟)では、全国が156.0(対前期比3.0%増)、三大都市圏で153.1(対前期比2.8%増)、南関東圏で151.1(対前期比3.9%増)と上昇しているのと対照的に、商業地では、全国が105.5(対前期比1.2%減)、三大都市圏が114.2(対前期比4.4%減)、南関東圏で122.1(対前期比12.2%減)と減少しています。土地総合では、全国が109.0(対前期比1.0%増)、三大都市圏が115.1(対前期比0.0%増減なし)、南関東圏が131.9(対前期比1.2%減)という結果です。

主としてアベノミクスによる異次元の量的・質的金融緩和策に後押しされて上昇してきた不動産価格の基調が今後も持続するかは些か不透明となりつつありますが、問題は、予想される調整局面に入って多少の価格下落が生じるとしても、“暴落”と言える程度の価格下落が起きるか、これは誰も明確なことは言えません。但し、いつか日本銀行総裁の人事が変わるなどして量的緩和が解除されるようなことにでもなれば、金利上昇による取引の減少等、勢い不動産市況に影響を及ぼすことがないとは言い切れません。

不動産投資で失敗しないための最低限の条件の一つに、収益物件を購入する前のデューデリジェンスすなわち詳細調査があります。すなわち、①物件の市場調査で賃料や空室率の変動を予測し、②建物の状況調査報告書から、キャッシュフロー計算に影響を与えうる緊急の修繕費の見込みや、中・長期での支出となる大規模修繕計画を立て、③出口戦略として売却価格を予め算定しておく必要があります。

収益物件の立地は、①にとって重要な市場分析する際の基本的な点です。ここ数年の地価上昇と建築資材の高騰が、これから供給される新築マンションや中古マンションの価格の上昇を引き起こしています。

マンション販売価格は、立地により用地費用や建設費用の割合は多少変動するものの、概ね利益が10%で諸経費が15%、用地費用と建設費用が75%を占めています。そのため、この部分の高騰はマンション価格上昇の大きな原因を構成しています。もっとも、新築マンションが販売されるまで2年ほど要するため、用地費用などの上昇が販売価格に転嫁されるにはタイムラグがあるという点に注意すべきです。

諄いようですが、収益目的のマンション投資を効果的に行うには、市場調査は不可欠です。市場調査の内容といっても色々ありますが、周辺エリアの地域特性や競合マンションの賃料水準と履歴、空室率の推移、売出価格や成約価格の事例など様々なデータが必要です。

地域特性を見る際には、駅前の状況、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど日常頻繁に利用する店舗の位置や数、その他病院や住民のニーズに応じた施設の分布密度、都市計画や都市整備の動向、エリア内の居住者の人口・世帯数動向、年齢別人口構成比、職業別、収入別構成比などを調査することによって、将来における地域の発展・衰退具合がある程度まで予測できるはずです。

次に重要な点としては、不動産価格に直結した動向予測です。これを行うには、エリア内の地価公示価格や地価調査基準地価格、不動産流通市場の売出価格・成約価格の動向を時系列で調査して、過去のトレンドや相場価格を掴むことが重要です。中古マンションの価格は、敷地利用権価格と区分所有建物価格で構成されており、土地価格に加え、建物部分がRCやSRCの場合、建物部分の価格構成比が大きくなる場合もあります。

他の中古マンション取引事例から対象となっている物件の価格を求めるには、検討対象となっている物件と条件が類似の建物の売出価格・成約価格などのデータから数値を把握しておくことです。最近では、インターネットを利用したデータベースサービスが充実してきているので、それを利用するのもいいでしょう。業者のみならず一般消費者も登録することが可能ですから、様々なデータを閲覧することができ、投資行動の一助とすることができるはずです。

購入を検討しているマンションの価格と賃貸に出した場合の相場賃料、あるいはオーナーチェンジで現行賃料が妥当かなどを当該マンションの販売履歴や賃料履歴を通して調べることもできます。数年間にわたる価格や賃料の時系列データを取得することでトレンドが一目で理解できるため、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法を利用して収益還元価格やIRR(内部収益率)を計算する際の賃料変動、出口での売却予測に有益なトラックレコードが得られます。区分所有マンション投資を考える場合、年々のリターンに値下がり分のキャピタルロスを考えた上でIRRを計算して意思決定するのが、投資の際の基本中の基本です。

不動産市況が上昇局面である場合には、どんぶり勘定で投資行動をとったとしても、たまたま上手く行く可能性もあるでしょう。しかし局面が少しでも傾き始めると、たちどころに崩壊してしまい兼ねません。どのような投資でも継続的に利益をあげることに成功している投資家の割合は全体の一割もいないと言われています。残りの九割は、明らかに失敗するか、それともトントンであるかでしょう。近い将来吹き飛ぶ投資家とは、例外なく基本中の基本の作業をせずに感覚で意思決定している人たちです。

本ブログで何度も強調していることなので若干触れるだけにとどめますが、金融政策と不動産市況とは切っても切れない関係であるので、一言だけ区分所有マンション投資と金利上昇の点について簡単に確認しておきます。

用地取得費用や建築費用の高騰も手伝って、マンション価格の上昇期待熱は一時ほどではないにせよまだあります。この上昇期待熱に冷水を浴びせることになるのが、金利上昇によるマイナス作用です。金利の上昇は、収益不動産の需要のみならず、購入者自らが居住する目的のいわゆる“実需”をも減少させる効果を持ちます。

金利上昇局面となると、これまでの区分所有中古マンション投資はどのような影響を受けることになるでしょうか。最近の黒田東彦日本銀行総裁の記者会見では、当面は金融緩和継続の見通しなので、量的緩和解除と金融引き締めによる金利上昇が今すぐに起こる可能性は小さい。

とはいえ、次の日銀総裁人事は日銀生え抜きの人物になるでしょうから(慣例上、日本銀行総裁人事は、財務省出身者と日本銀行出身者の襷掛け人事となっている)、前評判通り、雨宮正佳副総裁が就任することになれば、少なくとも現在の黒田東彦総裁の方針を積極的に推進することはないかもしれません。

そうすると、投資期待利回りと金利差が縮小する可能性が大きくなるだろうから、現行でさえ投資利回りが低い新築の収益用ワンルームマンション投資は、金利上昇局面においてはその収益モデルが崩壊することでしょう。新築に比べると利回りが高い同タイプの中古マンションも投資妙味は薄れることになります。収益が悪化するだけではなく、金利が上昇するとキャップレートも上昇するので、出口でのマンションの売却価格に対する下落圧力も強まります。

例えば、200万円のNOI(営業純利益)を得られるマンションで、3年後に売却する計画だとします。現在のキャップレートが4%で借入金利が2%としましょう。これがもし、借入金利が4%になり、リスクフリーの10年物国債利回りも4%になれば、その時点の購入者が、不動産投資のリスクプレミアムを2%上乗せした6%でないと買えないと考え、キャップレートを2%上げることによって、3年後の売却価格は5000万円から3333万円に下落するといった事態は十分に考えられます。

区分所有マンション投資の方向性を見る上で、ワンルームやコンパクトマンションの市場は供給過剰気味であるという現状認識は持っておいた方がいいでしょう。今後、空室が大量に発生するリスクを抱えますが、だからといって直ちに区分所有マンション投資がNGであるというわけではありません。ただ、旺盛な需要を見込める物件とそうでない物件に二極化が進行するということであって、いわゆる“ババ”を掴むことのないよう、投資分析より前にやるべきことでありながら、ともすれば忘れがちになる市場分析を欠かすことができない所以です。

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