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REIT投資VS実物不動産投資

ご存知の方が多かろうと思いますが、REITは不動産投資信託の略称で、REIT法人とは資産の75%を不動産で保有されねばならないよう設計された投資会社と思っておくといいかもしれません。REIT法人が複数の不動産を一まとめにしたものを小口化して投資家に販売し、当該不動産から得られた収益を投資家に分配するという仕組みの金融商品がREITです。ETFと個別株の関係に似ていると言う人もいます。

日本国内で組成され販売されているREITのことを“J-REIT”と呼んでおり、2001年に誕生した新しい金融商品です。中でも、公開株式のように市場に上場され原則として自由に売買できるREITを上場REITと呼びならわしています。ここでは、この上場REITの話に限定して話を進めます。

投資家の資金が「〇〇投資法人」と呼ばれる法人により運用の専門家が運営するREITに集められ、その資金で不動産を購入・運用します。不動産の運用で得られた賃料や売却したときの売却益が投資家に分配されます。

REITが運用する対象不動産は、住居用賃貸マンションやオフィスビルその他の商業施設、あるいは物流施設やホテルなど様々で、しかも特定の種類の不動産に特化しているREITもあれば、様々な種類の不動産を組み合わせているREITもあります。また、一つの不動産ではなく数十件の物件を保有するREITが多い。投資家はREITを買う行為によって、REITの保有する不動産を間接的に保有しているという関係になります。

REITの収益は、先述の通り、不動産の賃料収入と売却益から構成されます。その収益は分配金として支払われます。J-REITの場合、概ね年2回の支払いです。株式と似た点もありますが、株式と異なることは、REITはよほどのことがない限り分配金が定期的に支払われるという点です。キャピタルゲイン狙いというよりも分配金狙いで購入する投資家が比較的多い理由の一つになっています。

REITの主なメリットは、年間利益の90%以上が配当として投資家に支払われ、法人レベルでは課税されないことです。米国と同様、ペイ・スルー課税になっているためです。ペイ・スルー課税とは、J-REITを運用する不動産投資法人は、運用で得られた利益のうち90%以上を投資家に分配すれば、法人税が実質的に免除されるというルールです。

このルールのため、利益のほとんどが投資家に還元されることになります。そういうこともあって、株式の平均配当利回りよりもREITの平均分配金利回りの方が高くなるわけです。分配金利回りの高さ、これがREITのメリットで際立つ点です。

REITは、株式やETFと同様に公開市場で取引されます。僅かな投資口価格(REITの場合、投資家が投資法人に出資する単位を“投資口”と呼びます。“株主”と言う人も見かけますが、“投資主”という言い方をします)で収入を生み出す不動産のポートフォリオを保有するREITを購入することで、賃料や売却益から得られた収益からの分配金を狙うこともできますし、また投資口価格自体が跳ね上がってキャピタルゲインを得ることも期待できます。REIT投資とは、不動産投資の側面と株式投資の側面を足して二で割ったような性質を持つとイメージがわきやすいかもしれません。

実物不動産への直接投資と比較した場合、上場REITのメリットは、こうしたリターンの他にもいくつかあります。1つ目は、“多様化”を図れることです。REITだと、特定のセクターの不動産を所有する大規模な不動産ポートフォリオの一部を購入することになります。逆に、自分で実物不動産を購入する場合、通常は、複数の不動産ではなく1つの不動産にしか融資がつきません。2つ目は“流動性の向上”です。これらの上場REITは株式のように市場で売買できるため、投資家は実物不動産に投資するよりも遥かに流動性のある資産に投資できます。3つ目は、貸主であることに時間を費やす必要がないことです。4つ目は、一般にREITは金利が上昇すると価値が上昇しますので、金利が上昇するとREITの価値がそれに追随することが期待できます。

なぜREITが導入されることになったのか。この点については、考え方・見方が分かれるかもしれませんが、私の考えでは、日本にREITが導入された最大の理由は、不動産の流動化促進と資産デフレ脱却という政策意図のためではないかというものです。

もちろん、不動産収益を分配するミディアムリスク・ミディアムリターンの金融商品の提供という役割も期待されていたでしょうし、日本の不動産市場は透明性の点でシンガポールや香港に遅れをとるマーケットなので、不動産市場の透明度向上という役割も担わされていたのかもしれません。透明化を図ることで、国内外の投資資金の日本の不動産市場への流入が加速し、延いてはリスクプレミアム低下にも資するからです。

加えて、“社会インフラ整備”としての機能です。耐震、耐火性の高い建物に変えるべく、民間資金の活用が求められ、それを主にREITが後ろ盾として支えることが期待されていたと考えても、必ずしも考えすぎとまでは言われないのではないでしょうか。

現に、東京の建物の約三割は旧耐震であると言われ、これらを全部建て替えるとなると数十兆円を要する。これを公的セクターだけに任せることは到底できない相談。そこで、民間資金を有効活用するためにもREITを通した資金供給が求められたというのは何も邪推とまでは言い切れないでしょう。

対して、REITの最大のデメリットはコントロール可能性の欠如です。実物不動産投資で不動産を購入する時、完全な所有権の物件の所有者である限り、物件を自由に使用・収益・処分することが可能であり、次の収益不動産購入時には何を買うべきかについて決定を下すことが比較的容易です。ところがREITだと、文字通り受動的な投資家にならざるを得ません。どのタイプの物件をどこで購入するかについて自ら決定できず、代わりに適切なセクターの信頼できる経営陣がいるREITを選ぶことしかできません。

REITのデメリットの二つ目は、成長のために再投資できる額が年間利益の10%しかないということです。配当の形での90%の利益分配は税の観点から投資家にとっては好ましいことかもしれませんが、REITそれ自体の成長と将来におけるニーズを吸収するために多くの資本を投下できないという縛りがあります。

REITは不動産の購入に比べて分散投資が進んでいますが、それでもマクロ経済の動向の影響を受けやすくなっています。例えば、小売REITは全ての上場REITで一定割合を占めています。これらのREITは通常、大型ショッピングモールから独立した小売店まで何でも所有できます。これによって、小売セクター内で多様化がもたらされますが、依然としてリスクにさらされ続ける可能性もあります。これが三つ目のデメリットです。

そして、これをデメリットというべきかどうかはわかりませんが、REITの場合、広義の不動産投資に含まれるけれども、その本質は金融商品への投資に他なりません。不動産の金融化傾向は必然的な流れですから、マクロな視点からしてREIT投資を不動産投資とは別に考える必要はありませんが、さりとて、実物不動産投資には金融商品への投資とは異なる独自の醍醐味があって、その醍醐味とは、“家主”という不動産賃貸業の経営者として振舞えるというところだと思われます。

不動産投資家といっても千差万別で、中には不動産を長期保有している株式と同じように考え、購入以後管理会社に任せきりで何も自ら能動的に動こうとしないという投資家も見られます。対して、“家主”として自らの物件を単に管理会社の管理に任せきりになるのではなく、経営感覚を持って積極的に物件管理に関与している投資家もいます。不動産投資の特殊性を知悉した優れた投資家もおられます。

日本のREIT市場は未成熟ということもあって、今後どうなるかわかりません。しかし、伸び代に期待している人も多い。配当と資産価格の上昇をもたらす流動性ある不動産の多様なプールにアクセスしたい場合は、上場REITはおそらく適切な投資となるかもしれません。実物不動産への直接投資の混合戦略の相手として上場REITを組み合わせる。それは、かえって実物不動産を見る鑑識眼を養うことにも資するかもれません。

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