不動産投資入門一歩前②-「表面利回り」と「実質利回り」の違い(具体例)

前回、「利回り」について説明しました。「利回り」といっても、「表面利回り」であるのか「実質利回り」であるかによって大きく異なります。こと不動産投資において、この違いを無視すると、その後の収益計算が破綻してしまうことにもなりかねませんので、不動産を投資目的で購入しようとする投資家にとって、まずはおさえておかないといけない点です。

前回の最後で予告されていた、直接還元法を用いた収益還元評価の求め方とDCFの考え方を見て行く前に、今回は、具体的な事例を用いながら、(細かな要素はできるだけ省いて)簡単な練習をしてみたいと思います(既に御案内の方は、すっ飛ばしてください)。

次のような事例を想定します。ある時、幡随院さんは、不動産賃貸業を営む目的で収益不動産として木造2階建アパート(計9戸)1棟を105,000,000円で購入しました。全額融資で賄うこととし、金利が1.5%、35年の元利均等方式との条件です。

この物件の9戸が満室であるならば、年間で7,680,000円となる物件とします。この満室想定収入が総潜在収入(GPI)にあたります。そうすると、表面利回りは、総潜在収入÷物件価格ですので、

7,680,000÷105,000,000×100≒7.3(%)

になります。

固定資産税等を含めた管理・運営費(OPEX)が年間801,600円かかるとすれば、営業純利益(NOI)は、

7,680,000-801,600=6,878,400(円)

となります。実質利回りを意味する総収益率(FCR)は、

6,878,400÷105,000,000×100≒6.55(%)

になります。表面利回りが7.3%に対し、実質利回りは6.55%と開きが生じることがわかります。これはOPEX次第で変わってしまいます。

ところで、ここに空室が1戸発生したとすれば、どうなるでしょうか?総潜在収入(GPI)はもちろん変化はありません。しかし、実効総収入(EGI)が変わります。空室1戸生じることで発生する損失が853,000円とすると、空室損は853,000円ですから、実効総収入(EGI)は、

7,680,000-853,000=6,827,000(円)

となります。ですから、この実効総収入から運営費等(OPEX)を差引いて得られる金額が営業純利益(NOI)となり、その額は、

6,827,000-801,600=6,025,400(円)

ですから、実質利回りすなわち総収益率(FCR)は、

6,025,400÷105,000,000=5.7(%)

となるわけです。

ちなみに、この場合、幡随院さんは105,000,000円を金利1.9%で35年の元利均等方式での融資を組んでいますので、年間負債支払額(ADS)は4,110,000円となります。所得税を引く前の、いわゆる税引前キャッシュフロー(BFCF)は、もし9戸満室時であるならば、2,767,400円に、1戸空室であれば1,915,400円となります。

目次