バーチャル・アートワーク、バーチャル・イベント、バーチャル・マーケティング。では、バーチャル不動産はどうか?もしあるなら、バーチャル不動産に投資できるか?
バーチャル不動産がメタバースのおかげで市場の新しいフロンティアとなるためには、エージェントやブローカーが、業界にとってそれが何を意味し、どのように機能するのかという点について知る必要があります。
人々が互いに繋がり合ったり、ゲームを遊んだり、製品をリリースしたり、サービスを提供したり、イベントを開催したりできるオンライン・プラットフォームしてのメタバース不動産。メタバースは、まだ新しく登場したばかりですから、多くの人はバーチャル不動産投資に価値があるかどうか懐疑的かもしれません。
では、不動産にとってのメタバースとは何か。このことを考えるにあたって手っ取り早い好例は、“メタバース不動産”でしょう。メタバース不動産は、NFT(非代替性トークン)を購入する方法と同様に購入することができます。既に多くの人々に知られている通り、NFTは、デジタル・アートなどの仮想世界に完全に収蔵される購入・収集可能な仮想アイテムです。このNFTと同様に、“メタバース不動産”も暗号資産(仮想通貨)で購入することができます。
取引が完了すると、所有権の証書として機能するブロックチェーン・コードを受け取ります。仮想現実と拡張現実を使用して仮想世界を作成するデジタル・プラットフォームである“メタバース”と呼ばれる、ある種の“プラットフォーム”上で“不動産”が売買されるという仕組みです(もちろん、ここでいう“不動産”とは現実世界の土地や建物といった有形の不動産とは意味が異なります)。
その核心となる考え方は、メタバース・プラットフォームが仮想世界と現実世界の間の接続を提供するというものです。例えば、The Sandboxは、2022年後半にリリースされることが予定されているブロックチェーン・ゲームであり、メタバース・プラットフォームの一つです。The Sandboxでは、ゲーム内でNFTである土地(LAND)を所有し、そのLANDの上でゲームやジオラマを作ることができますし、また他人が作ったゲームをプレイすることもできます。
のみならず、作ったゲームやジオラマを、他のプレイヤーに有料で提供するしたり、NFTをNFTマーケットプレイスに出品したり、あるいは土地(LAND)やその上に建築した施設を利用して“不動産収入”を得ることもできます。渋谷109もThe Sandbox内の土地を購入し、SHIBUYA109 LANDを開設することにしているそうです。
最初のステップは、メタバースで使用するデジタル・ウォレットを設定することです。デジタル・ウォレットを使用すると、ソフトウェアを介して現金なしで取引を行うことができます。デジタル・ウォレットには様々な種類があり、メタバース・ウォレットは基本的にブロックチェーン・ウォレットにいくつかの機能が追加されたものです。これにより、ユーザーは様々な暗号資産(仮想通貨)を操作し、トークンを転送、保持および受け取ることができます。
取引に参加するには、多くのメタバース・プラットフォームのいずれかでアカウントを作成し、それをデジタル・ウォレットにリンクする必要があります。次の段階で、魅力的な物件を探して購入します。
誰でもメタバースで購入できますが、デジタル資産を購入する理由を特定し、それが良い投資であるかどうかを評価することが重要です。例えば、誰かが自分のビジネスを宣伝したり、技術的な進歩に投資したりしたい場合、メタバースはおそらく優良な選択かもしれません。メタバースはまた、一般的に不動産価格が従来の不動産よりも遥かに低いため、他の方法では投資できない可能性がある人々に投資機会を提供します。
但し、未知とリスクに抗する人にとって、適切な投資手段にはならない可能性があります。現実世界の取引と同様に、メタバースの購入はブローカーと不動産管理者を経由します。 しかし、現実世界とは異なり、これらのブローカーや不動産管理者は宅地建物取引業の免許などといった不動産ライセンスを必要とせず、どの組織であっても原則的には規制は存在しません。
バーチャル不動産の価値は需要に応じて変動しますが、これまでのところ上昇しています。4大メタバース不動産所有者の1つであるDecentralandが2017年に最初のオークションを開催した時、土地の一区画の価格は僅か20ドルでした。2021年には6,000ドルで販売され、2022年の初めには約15,000ドルまで値上がりしました。メタバースでは、一区画のサイズは106ヤード×106ヤードで、プロットのピクセル数によって決まります。
こうしたプラットフォームへの関心が高まる中、メタバース資産の潜在的な値札には限界がないかのように見えます。ほとんどの物件の価格は6,000ドルから100,000ドルの間ですが、例外も見られます。例えば、最高の売上げの1つは、The Sandbox内のある区画の物件を45万ドルで購入した事例です。
クリエイターやブランドは、デジタル化された土地を購入して、厳選されたコレクション、製品、またはサービスを展示するギャラリーや店舗を建設できます。Cryptovoxelsの土地区画は現在、1ロットあたり平均5,000ドルで販売されていますが、物件の規模と場所によっては、価格が10,000ドルを超えることもあります。イーサリアム・ブロックチェーン上の他の仮想世界と同様に、土地の所有権はブロックチェーンに永続的に記録されます。
ブロックチェーン・テクノロジー企業であるTokens.comは、バーチャル不動産会社Metaverse Groupの50%を170万ドルで買収しましたし、Republic RealmはThe Sandbox内の物件を430万ドルという破格の価格で購入しました。
メタバースは、様々な形、サイズ、場所、価格帯の“不動産”を提供しています。幅広い暗号資産(仮想通貨)で購入できます。手頃な価格とアクセスの容易さは、ほとんどの人が投資できることを意味するでしょう。
メタバース不動産では、今のところ実用性よりもサイズと場所に重点が置かれています。現実世界の不動産では、サイズ、場所、及び実用性すべて重要な要素ですが、メタバースでは、土地を購入する目的は、土地を開発するかリースすることです。
そうした特徴を持つメタバース不動産ですが、現実世界の活動のプラットフォームとして機能するかもしれません。将来的には、見本市、展示会、結婚式、その他の社交的な集まりなど、メタバース上でより多くの現実世界の活動を補助する可能性がありますから、これにより、これらの目的に使用される実店舗の需要が減少する可能性もないわけではない。
現在、メタバース不動産は関心を向けるに値する対象であるかのように見えますし、投資先としても興味深いと感じている投資家もいることでしょう。何せ、3~4年の間で何倍もの価格に跳ね上がったわけですから。
それだけでなく、メタバースは、一見無関係に思える現実世界の不動産業界に新しい視点を提供してくれるかもしれません。この点に触れ始めると、文章も長くなりそうなので、続きは次回のコラムに回したいと思います。