(ⅰ)コア戦略(Core strategy)

(ⅰ)コア戦略(Core strategy)とは、一般にローリスク・ローリターンの性質を持っています。この戦略は、リスクを嫌い、最小限のレバレッジを使用して一定のキャッシュフローを生もうとする投資家に適しています。

また、将来の目標のために安定した長期収入を求め、短期的な利益を得るよりも長期保有期間の元本保全を優先するいわゆるパッシブ投資家(passive investors)にも適しています。いわゆる富裕層が不動産に関して行ってきた伝統的戦略の一つで、保守的な投資アプローチとして知られています。

その主な目的は、ディベロップメントやリノベーション等の必要がほとんどなく、安定したキャッシュフローを生み出すコア不動産を運用することにより長期的に安定したリターンを得つつ、リセッション時における下落幅が小さく、更に早期回復を見込める一等地にある不動産を保有することによって資産の防衛を図ることです。インフレ時においてヘッジ手段として機能するディフェンシブな投資戦略です。

加えて、株式や債券など金融資産への投資を主にしている投資家にとっても、不動産はポートフォリオに組み込む資産の一つとして魅力的に映るはず。株式市場はアクセスの容易さや流動性の高さなど幾つかの利点があるのに対し、不動産相場は株式市場よりもボラティリティが小さく、パブリック・マーケットの投資パフォーマンスとの相関が小さいという特徴から、不動産は主に株式や債券に割り当てられた投資ポートフォリオを補完する機能を担い、有意味な分散投資の手法を提供します。

とりわけ、世界中で溢れかえった緩和マネーが資産価格の高騰に貢献してきた一方で、クレジットクランチの潜在的リスクを抱かえた市場全体との相関性が小さい不動産への分散がリスクヘッジ手法として有効になります。

コア投資戦略のメリットを数点でまとめとするならば、
(ア)手間がかからない

(イ)安定性がある

(ウ)高い流動性

(ア)手間がかからない
について触れるとするならば、投資家は、不動産管理に多大な注意を払う必要はありません。リースは一般的に長期であるため、投資家は第三者の不動産管理者に管理義務を委託することが多く、不動産の日常業務に積極的に関与しません。

コア不動産は通常、最高級の資材を使用して建築されたクラスAの物件です。これらの物件は、賃貸契約に応じて、多くの場合、プロパティマネージャーによって適切に維持されているか、もしくはテナントによって適切に管理されています。したがって、コア投資家は、そのような物件を取得する際、改修にほとんどあるいは全く費用をかけずに済みます。

(イ)安定性がある
について触れるとするならば、取得された基礎となる高品質の資産を考えると、コア不動産投資は、ビジネスサイクルを通じてより一貫したパフォーマンスを示し、景気後退時に持ちこたえる傾向があります。したがって、コア不動産は、投資家に比較的低いリスクで予測可能なリターンを提供する投資です。

このような投資は、一般的に資本価値の大幅な上昇を経験せず、安定した市場でのビジネスサイクルを通じて、その価値を維持し続けます。

(ウ)高い流動性
について触れるとするならば、コア不動産は通常、需要の高い地域にある最高の物件クラスであるため、人気があり魅力的で市場性のある資産と見なされます。

もっとも、コア投資戦略にもデメリットはあります。簡略に整理すると、

(い)高い参入障壁

(ろ)制限されたコントロール

となるでしょう。

(い)高い参入障壁
について触れるならば、コア不動産資産は通常大きく、しかも高額です。したがって、コア不動産市場の参加者の大多数は、REITや機関投資家など資金が豊富な事業体か、もしくは超富裕層です。資本が限られている個人投資家は、コア資産取引にアクセスするのが難しいことが多い。

(ろ)制限されたコントロール
について触れるならば、コア不動産にはほぼ固定された市場賃料があることがあるので、投資家は、賃貸収入を更に増やすためにコア物件に付加価値を付けるのは難しいと感じることが多く、変化する市場でコア資産の競争力が失われることもありえます。例えば、より競争力のある賃貸価格の新築ビルが市場に参入した場合、テナントは賃貸借契約を更新するのではなく、新しい物件に引っ越したくなる誘惑にかられる傾向が高まります。

テナントが離れると莫大な支出が発生することもあるため、テナントを維持するインセンティブを提供することは、投資家の最善の利益に叶います。このようなインセンティブには、テナントの家賃の引き下げや家賃無料の期間の提供も含まれます。

こうしたメリット、デメリットがあるコア戦略ですが、対象となるコア不動産を評価する際に使用する指標が有用です。

一般に、不動産に投資する場合、投資家は潜在的な投資を評価するために関連する指標を理解することが重要です。コア資産は収入主導型で現金集約型のプロジェクトであるため、次の3つの指標は、プロジェクトのリスクレベルと収益性を明確に掴むことができます。とりわけ、
(1)キャップレート

(2)内部収益率(IRR=Internal Rate of Return)

(3)現金利回り


が重要になります。

(1)キャップレート
は、投資された不動産の初期資本の市場価値または売却価格に対する不動産によって生み出された収入額の比率です。これは、投資価値に対する純営業利益の割合を示します。キャップレートが低いほど、リターンは低くなります。これは、賃料の引き上げなど、賃貸条件を調整するだけで最適化でき、リスクが低下します。一般に、ニューヨークやロンドンあるいは東京などの需要の高い都市のコア資産は、通常、低いキャップレートを示しています。

(2)内部収益率(IRR=Internal Rate of Return)
は、長期投資に役立つ指標です。IRRはお金の時間的価値を考慮に入れているため、正味現在価値(Net Present Value=NPV)をゼロに設定し投資の保有期間を見積もることで、投資家は不動産資産の収益性を計算できます。


(3)現金利回り
も、長期投資に役立つ指標です。現金利回りは、不動産の年間純キャッシュフローを取得し、それを投資の頭金で割ることにより投資収益率を計算します。この指標を使用して、投資家は不動産資産の収益性を計算します。

結論として、コア投資戦略は、ポートフォリオのリスクを軽減したい保守的な投資家にとって有益です。コアプラス戦略、バリューアッド戦略、オポチュニスティック戦略よりも比較的低いリターンとなりますが、長期的にも予測可能で安定した収入が続く可能性があります。

コア投資戦略は、受動的収入の獲得のみに焦点を当てている投資家にとって優れており、投資の一部を多様化するための信頼できるオプションになる可能性があります。

すべての投資戦略には常にメリットとデメリットがあります。投資家は、様々な投資戦略のメリットとデメリットを理解して、投資目的に最適な戦略を確認する必要があります。コア不動産投資戦略は、投資家にとって高い参入障壁を伴う、限られたコントロール可能性とる欠点を抱えますが、手間がかからず比較的安定しており、その資産も高い流動性を持つ傾向にあります。また、適切な指標と組み合わせると、投資家は資産のファイナンス予測のパフォーマンスを正確に測定し、適切な投資決定を下すことができます。

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